マレーシア国境に近いタイ南部で四月二十八日にイスラム教徒が警察署などを襲撃する事件があり、計百八人が軍の鎮圧部隊などにより射殺された。うち三十二人はパッタニー県内のモスクに立てこもっていて殺害されている。 南部三県には、タイ人口の四%を占めるイスラム系住民の八割が集中。これまでは比較的穏健とされてきたが、軍によると、モスクが虐殺の舞台になったことへの憎悪から、自爆テロ志願者も含め新たに最大三万人規模の武装グループが組織されつつあり、十五―二十人の小グループに分かれて、南部三県を中心に千五百の場所で政府機関や警察関連施設を襲撃する新たな計画があるという。タイ治安当局は「準戦時」の警戒態勢を取っている。 タクシン政権は事件直後、「国内の犯罪組織の黒幕が地元の若者を雇い、転売目的で警察の武器強奪を狙った」と説明したが、陸軍の調べで、射殺された三十二人の中にインドネシア国籍とみられる七人がいたことが判明。南部一帯で年初来続く警察や軍への襲撃には、ジェマー・イスラミアやマレーシアに拠点を置くカンプラン・ムジャヒディン・マレーシアなど国外のイスラム過激組織の関与の可能性が高まっている。

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