在任最長記録を更新中だった福田康夫官房長官が「政治不信を増幅させた。けじめをつけて職を辞したい」と、記者会見で辞任を表明したのはゴールデンウィーク気分が覚めやらぬ五月七日のことだった。 午前十時十分に始まった会見はいつも通り、淡々とした雰囲気で進んだ。閣議の説明、前日の年金改革関連法案をめぐる与党と民主党の修正合意に関するコメント……この日で在職千二百八十九日、会見の運びは手馴れたものだった。「いいですか? 私から一言申し上げます」 会見終了間際、福田氏は突然、手元に用意した文書を一気に読み上げた。「年金の未加入、未納の問題があったことが判明し、政治に対する信頼を失ったことは慙愧に堪えない」「私の対応の不手際で内閣のスポークスマンとして政治不信を増幅したことをおわび申し上げる」。突然の辞意表明に会見場は蜂の巣をつついたような騒ぎになった。 森、小泉両内閣を通じて内政、外交両面に目を光らせてきた実務派長官が足をすくわれたのは、年金法案審議の中で急浮上した国民年金保険料の未納問題だった。月額一万三千三百円。永田町的にはわずかな金額だが、世間の目は厳しかった。四月二十三日の中川昭一経済産業相ら三閣僚を皮切りに、二十八日は福田氏ら四閣僚と民主党の菅直人代表、二十九日は民主党の鳩山由紀夫前代表ら、と次々に政治家の未納が発覚。各地の社会保険事務所には「国会議員も払っていないのに、なぜ私たちから取り立てるのか」と苦情の電話が殺到していた。

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