「日本の経済援助の効用」を説いた中国

執筆者:藤田洋毅2004年7月号

「六カ国協議」の継続に腐心する裏には、先を見据えた狙いがある。「北東アジアの重要問題は当面、中・米が主軸となって取りしきる。そんな方向性が、浮かび上がってきたのではないでしょうか」 複数の中国筋は、北朝鮮の核開発をめぐる六カ国協議で「中国は米国と並ぶ主導権を、ほぼ手中にした」とし、党中央の幹部の一人は「中・米以外の(日・露・韓など)参加四カ国は付録」とまでいう。中国は今後、協議を舞台に「地域の藍図(青写真)を描く考えだ」と、この幹部は明言した。 四月に訪中した北朝鮮の金正日総書記から「拉致被害者の家族を必ず帰国させる」との言質を取り付けていた中国。従来、拉致は日朝の二国間問題としていた立場から踏み出し、「建設的な役割を果たす用意がある」(李肇星外相)と述べ、ジェンキンス・曽我さん夫妻の再会場所の提供まで申し出るなど、着々と六カ国協議前進への環境を整えつつある。 対米折衝にも怠りはない。金訪中の一週間前に訪中したチェイニー米副大統領には、米国を発つ前に金訪中の計画を伝達した。北京に到着したチェイニー副大統領は、江沢民・党中央軍事委主席と胡錦濤総書記に「米国は当面、北への軍事制裁を準備していない。金総書記に伝えてください」との伝言を託した。イラク情勢は、在韓米軍の一部まで中東へ派遣しなければならないほど混迷し、米国が二正面で紛争を抱えるのは不可能なことが明らかになった。チェイニー副大統領の一言を「とりあえず、十一月の大統領選まで中朝はじっくり話し合って、核問題の出口を探ってほしい」という意味だと中国は受けとめた。北の安全を確保し徐々に北を改革路線へ歩ませたい中国は、六カ国協議の議長を務める王毅・外務次官が北の高官に対し、日本の経済援助がいかに中国の近代化建設に役立ったか、口をすっぱくして解説したという。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。