希代の戦略的詐欺師にイランの影は濃く

執筆者:春名幹男2004年7月号

 週末のホワイトハウス、外の観光客の喧騒とは対照的に、中はひっそりしている。しかし五月二十二日(土)はちょっと様子が違っていた。ウエストウィングにある、ライス国家安全保障問題担当補佐官の部屋に、数人が押しかけ、ライス補佐官を質問攻めにした。 リチャード・パール前国防総省国防政策委員長やジェームズ・ウルジー元米中央情報局(CIA)長官らの姿が見えた。ネオコンサーバティブ(新保守主義者、略称ネオコン)のグループである。 その二日前、彼らが強力に支持していたイラク国民会議(INC)のアハメド・チャラビ代表のバグダッドの自宅と事務所がイラク警察当局の捜索を受け、部下七人に逮捕状が出た。捜索には、CIAの要員や米連邦捜査局(FBI)の捜査官らも立ち会った。 パール氏らは口々に、チャラビ代表に対する根拠のない「中傷攻撃」と非難したという。 このチャラビ切り捨て劇、いささか大げさだが、アメリカ版“宮廷クーデター”の様相を呈している。 イラク戦争は、経緯からみてチャラビ代表抜きには考えられない。フセイン政権打倒(レジーム・チェンジ)を盛り込んだ一九九八年の「イラク解放法」は、チャラビ代表らのロビー活動を受けて、当時のトレント・ロット共和党上院院内総務がまとめ、成立した。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。