近年、北方領土でロシア人の人口が増加しており、国後、色丹両島で計一万人に近づいていることが、ロシア側の最新国勢調査で分かった。日本側は先のシーアイランド・サミットで合意した来年早々のプーチン大統領訪日で平和条約交渉を動かしたい意向だが、島民の定住増は領土問題解決にマイナス効果となる。 国後、色丹両島は一九九四年の北海道東方沖地震後、島民脱出が続き、人口は合わせて六千七百人まで減少したが、昨年の調査では計九千七百人まで回復した。いったん脱出した島民が戻っていることに加え、出生率も上昇しているという。管轄するサハリン州政府は定住促進のため、島のインフラ整備を進める計画だ。大型漁業コンビナートのある択捉島も生活水準が向上し、定住者が増えているといわれる。ロシア極東では年間十万人ずつ人口が減っているのに、北方領土だけが例外なのだ。 辺境警備に当たる兵士も新たに歯舞諸島に入植することを決め、五月に志発島など三島の入植予定地に十字架を建設した。歯舞にはソ連時代から国境警備隊しか駐屯していなかったが、今後定住が始まる見通し。歯舞、色丹の二島返還さえ困難になる可能性がある。

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