“ベンチャー”のつもりなのに

執筆者:成毛眞2004年7月号

 会社を立ち上げて四年。不思議なことに、いまだかつて「ベンチャー」と呼ばれたことがない。会社も黒字化し、海外事業もこなし、大手企業とも提携したりしているのだが、ベンチャーキャピタルの姿さえ見たことがない。いまだに泡沫企業だと思われているのだろうか。いささか不安になる。本人はベンチャーのつもりなのだ。 ところで、ベンチャーとは創業者が存命で、新しい産業を創出したか、または既存秩序を破壊した企業というのが僕の定義だ。単に社歴の浅い企業をベンチャーと呼びたくはない。それでは開業したばかりのラーメン屋やペットショップまでベンチャーになってしまう。 ソニーやホンダも、もとはといえばベンチャーそのもの。それぞれに精密家電産業と個人向け乗用車産業を作りだした。大企業になったとはいえ、ダイエーやヤマト運輸はそれぞれの業界秩序を破壊した立派なベンチャーだ。戦後日本は世界でも稀なほど、ベンチャー企業が輩出したのだ。 一方、昨今もてはやされているベンチャーのなかにはその定義からはずれている企業が多い。何ら新しい産業を創出したり、業界秩序を破壊したりしていない企業群である。レストランのチェーン店や多くのソフトウェア会社などが該当する。

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