JR宇都宮駅から車で一〇分足らずの市街地に、富士重工業宇都宮製作所がある。かつては名門、中島飛行機の主力工場の一つで、今も富士重工の航空機生産の拠点である。工場内に残る戦前の建物を背に出迎えてくれた戸井康弘・第二技術部部長は、四五歳だが、穏やかな人柄の中に名門企業の伝統を受け継ぐ気概が満ちていた。戸井部長は今、ボーイング社の次世代旅客機7E7開発の富士重工側のプロジェクトリーダーを務める。 富士重工は7E7の中央翼、つまり胴体の一部として主翼を受け止め、かつ航空機のあらゆるシステムが交差する部分の開発と生産を担う。中央翼は燃料タンクも兼ねており、引火につながる帯電を防ぐ細やかな仕組みも盛り込まれる非常に重要な部分。三菱重工業の主翼と併せ、ボーイングは機体の根幹部分を日本メーカーに託したのである。 戸井部長は、ボーイング767や777、そして7E7の前に構想された音速旅客機ソニック・クルーザーの開発にも関わってきた。その経験から航空機開発について、「答えを探しながら作るのではなく、先にある答えを理解しつつ組織としてものづくりの力を発揮する世界。それだけに、さまざまな課題を擦り合わせながら優れた製品を生み出してきた日本産業が力を発揮しやすい」と語る。

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