ダブリンで祝った東方拡大

執筆者:西川恵2004年7月号

 欧州連合(EU)は五月一日、東欧など十カ国を新規メンバーに加え二十五カ国体制となった。旧社会主義国を包含したこの拡大で、戦後の欧州統合の歩みは新たな段階に到達したのである。 一日、EU議長国のアイルランドの首都ダブリンで拡大記念式典が催された。議長国のめぐり合わせとはいえ、EUの東方拡大を祝うのに欧州の西の果てアイルランドが主催国となったのも面白い。 式典会場は市の西方にあるフィーニックス・パーク。欧州で一、二を争う七百十二ヘクタールもの広大な公園である。午後五時半、ポーランド、ハンガリー、チェコなど新規加盟国を含むEU二十五カ国の首脳が屋外の特設舞台に居並ぶ中を、軍楽隊のラッパを合図にアイルランドのマカリース大統領とアハーン首相が入場した。 新しいメンバー国を祝福する両首脳のスピーチに続いて、一九九五年にノーベル文学賞を受賞した詩人のシェイマス・ヒーニーがこの日のために作った詩「ベルタナ祭の烽火」を朗読した。「ベルタナ」とはアイルランド語でメーデーの意。昔から「火祭の日」として知られる祝祭日で、二重の意味で祝福すべき日となったのである。 ギリシア人はよそ者のことをバルバロイと呼んだ……

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