参院選―不発に終わった「小泉サプライズ」

執筆者:平野貞夫2004年8月号

 保守本流が正々堂々と闘わない性質の悪い選挙だった。曽我さんのインドネシアでの家族との再会や、社会保険庁の長官人事を、なぜ投票日に間に合うように急いでやったのか。人権や人事を私的な利害に絡ませては政治の公正さは保てない。 今回は民主党の落ち着きが目立った。自民党の地盤だった農村部の中から崩れそうなところを見極めて攻めた。自民候補に農協の推薦を与えないなど、水道の蛇口を閉める戦術だった。 これまで民主党は、誰もが自分のことだけしか考えない「マンションの管理組合」だった。それが、今回の選挙では追い風を受け、政権交代という共通の目的をもった「中小企業の協同組合」に変わったかに見える。ただ、この結果を謙虚に省みて、日本国を経営する新しい政治理念の構築に一丸となって取り組んでいけるかが今後の問題だ。その点、岡田克也代表は、自分が中心になって政権交代を狙うというより、政権交代の環境作りをする一員という謙虚さを持っている。 民主党が政権奪取のためになすべきは、国民の多くが賛同できる基本的な理念をわかりやすい形で提示することだ。近視眼的に見るのではなく、歴史的な視点を持つことだ。今の野党各党にはそれがない。激動の時代だからこそ、古典的なことを振り返ることにも価値があるのではないか。

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