中国「二〇〇六年台湾侵攻」の緊迫

執筆者:藤田洋毅2004年8月号

中台間のキナ臭さが増し、中国が金門島上陸作戦を検討しているとの情報も流れている。背景には江沢民の「自信と焦り」があった。「台海必有一戦(台湾海峡は一戦を避けられない)」――中国共産党中央軍事委員会の江沢民主席は、こう言明したという。 五月二十日の台湾・陳水扁総統の二期目の就任演説をはさみ、中国は前回二〇〇〇年よりさらに激烈な文攻(文章・言論による攻撃)を繰り出している。 なかでも、当の中国の幹部らをも驚かせたのが、空軍の最高幹部の一人、劉亜州・副政治委員(中将、五十一歳)が明かした江沢民の「中台戦争不可避論」だ。江発言の真意はなにか、なぜ劉は今の時期に発表したのかをめぐり、さまざまな憶測が飛び交う。 劉中将の“背景”を知れば重みはさらに増す。劉中将の岳父は故李先念・国家主席であり、夫人の李小林は中国人民対外友好協会副会長、実父の劉建徳も蘭州軍区後勤部副政治委員を務めるなど、まさに共産党のサラブレッドだからだ。 劉中将は処女作『陳勝』(一九七七年)発表以来、『両代風流』『広場』など軍事・戦争・歴史を題材にした作品を発表しつづけ、「文学将軍」として有名だ。中国作家協会理事として海外との交流も多く、ことに米国には数カ月単位の出張を重ね、八六年五月からほぼ一年間、米スタンフォード大学で客員講師を務めるなど、軍高官としては異色の滞米歴ももつ。

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