池内恵の中東通信
池内恵(いけうちさとし 東京大学教授)が、中東情勢とイスラーム教やその思想について日々少しずつ解説します。
1ヶ月前に、この欄で、UAE(その外交・軍事を指導するのはアブダビ)の興味深い動きについて記しておいた(「対イラン戦争の寸前で身を翻したUAEアブダビ」2019年6月30日)。中東の動きは実に早い。たったひと月の間に、UAEの外交は大きく舵を切り、なりふり構わず、これまで…
「中東の部屋」に、「トルコは4年間の「選挙空白」期間へ:2023年の建国100周年を制するのは誰か」を寄稿し、長期的な視野からトルコ政治の現在を位置づけ、将来を見通してみた。筆者は公刊する文章で、同じことを二度書くことはない。そのため、今現在生じている事象につい…
ここのところ筆者が力を入れているのは、中東圏への情報発信である。特に、ドバイのアラビア語紙『アッ=ルウヤ』に毎週、国際安全保障や中東問題に関するコラムを寄稿するようになって、かなり多くの時間と労力を割くようになった。また、アラビア語版だけでなく、英語版も作…
5月初頭から急激に高まった米国とイランがペルシア湾で睨み合う緊張の高まりは、5月12日に何者かによりUAEフジャイラ沖でのタンカーなど4隻への攻撃が発生したところで一触即発の雰囲気に包まれ、6月12−14日の安倍首相イラン訪問中の6月13日にホルムズ海峡の出口付近のオマー…
5月8日に岩瀬昇さんが、中国の石油備蓄タンクにイランが所有する石油を「寄託」する形で米国の制裁を逃れて取引を行うのではないかという観測を書いておられた(岩瀬昇『米「原油禁輸制裁」対抗でイラン・中国「秘密取引」の可能性』2019年5月8日)。この記事はなかなか考えさ…
先日、WhatsAppの脆弱性をついたハッキングの問題をメモしておいたが(「イスラエルNSO社のスマホ・ハッキング技術の有力顧客は湾岸産油国」2019年5月15日 03:35)、同じ頃、この問題を対イラン強硬派の諸国の動きと結びつけて考えてみる観測記事を、『BBC』のウェブサイトが…
ここのところの米国とイランの間の緊張の高まりの中で注目を集めた記事はこれだろう。"White House Reviews Military Plans Against Iran, in Echoes of Iraq War," The New York Times, May 13, 2019.5月9日のトランプ大統領を囲む安全保障をめぐる閣僚・顧問の会議で、対イ…
米・イラン間の緊張が高まるペルシア湾岸情勢で、エスカレーションを進めかねないのが、米トランプ政権と一致して対イラン圧力を強めるサウジへの、イランの代理勢力とサウジが認識する勢力からの攻撃である。5月14日にサウジ国営通信社が伝えた、ハーリド・アル・ファーレハ…
ジョン・ボルトン米大統領安全保障問題担当補佐官と、マイク・ポンペオ国務長官が牽引するとされるトランプ政権内の対イラン強硬派が、イランとの緊張を意図的に高め、いわば「意図的に偶発的な衝突を生じさせる」ことを狙っているのではないかという疑念が、フジャイラ沖の「…
5月15日に急遽訪日したイランのザリーフ外相の最近の動き。5月15日から遡る「過去数日以内」に、カタールのムハンマド・ビン・アブドッラフマーン外相がイランを訪問しテヘランでザリーフ外相と会談した模様である。ウデイド空軍基地に米軍を受け入れつつ、米同盟国のサウジや…
イランのザリーフ外相が、5月15日、急遽来日した。外務省によれば、滞在は17日までの予定という。NHKの報道では、16日に河野外相との会談、安倍首相への表敬訪問が行われる模様である。NHKのウェブサイトは短期間で削除されてしまうことが多いため(これによってNHKは国際的に…
ペルシア湾の出口ホルムズ海峡の外に位置するUAEフジャイラでの事件と関連があるかどうか分からないが、気になるのは、5月11日にパキスタン南西部バルーチスターン州の港市グワダルで起こった、高級ホテル(Zaver Pearl-Continental Hotel)の襲撃事件である。初期の報道では…
フジャイラ沖船舶への「破壊工作」の実態が一向に明らかにならないまま緊張が高まるペルシア湾岸情勢は「霧の中」にある。水面下での工作が絡む場合、大国の諜報機関ですらそう即座に明らかにできないものであるから、目先の情報に踊らされることは時間と労力の無駄である。公…
米国トランプ政権が、イランへの圧力を強めていく中で、5月12日にUAE(アラブ首長国連邦)のフジャイラ港沖で発生したとされる、サウジ2隻、UAEシャルジャ1隻及びノルウェーの4隻の船舶を対象とした「破壊工作」を境に、偶発的な衝突の危険性への警戒が高まっている。5月14…
今年の10連休は、休みなく2回の中東出張で費やした。トルコとイスラエルにそれぞれの用事で出向いて忙しく過ごしたのだが、特に現地での(現地との)やりとりに欠かせないのが無料で通話やテキストメッセージのやりとりをする対話アプリのワッツアップ(WhatsApp)である。現…
今週の中東からのニュースで、地域国際政治の長期的・構造的な変化に大きな意味を持つのはこのニュースだろう。"Exclusive: Egypt withdraws from U.S.-led anti-Iran security initiative - sources," Reuters, April 11, 2019.エジプトが「アラブ版NATO」とも呼ばれる、サウ…
最近の中東の関心事といえば、4月9日のイスラエル総選挙だろう。注目・関心は一点「ついにネタニヤフ首相が退陣するか」どうかにある。イスラエル検察は2月28日、ネタニヤフ首相を汚職疑惑で起訴する方針を発表した。選挙では、ネタニヤフのかつての側近たちを含む対抗勢力が…
日々に新しい動きが身の回りに起こるのだが、最近の特筆すべき出来事は、ドバイのアラビア語日刊紙『アッ=ルウヤ(意見)』のコラム二ストになって、毎日曜日にコラムを寄稿するようになったことだ。2月に始め、すでに6回のコラムを寄稿している。最近も昨日3月31日に掲載さ…
グローバルセキュリティ・宗教分野では、私の主要なフィールドである中東を中心に、ロシア・東欧・バルカン、あるいはアフリカや南アジアなども対象に含んでいる。そういうこともあって、特任助教に、『フォーサイト』への寄稿でもおなじみの小泉悠氏を採用した。日本の国立大…
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