ISI非難めぐり、国務長官と軍が役割分担

執筆者:春名幹男 2011年9月29日
タグ: タリバン
エリア: 北米 アジア

  アフガニスタン反政府勢力タリバンと同調して対米攻撃を続ける軍閥ハッカニグループはパキスタンの情報機関、3軍統合情報総局(ISI)の「紛れもない1部門」とマレン米統合参謀本部議長が議会証言した問題が波紋を広げている。パキスタン側がこれに強く反発、米・パキスタン関係が再び険悪化しているからだ。
同グループは9月13日カブールの米大使館をロケット弾で攻撃したほか、6月にホテルが襲撃された事件の背後にもハッカニグループが介在した「明確な情報がある」といわれる。米紙ニューヨーク・タイムズによると、米大使館攻撃の直前、ハッカニグループのゲリラがISIの工作員と携帯電話で連絡を取っていたことが米情報機関によって探知されたという。
しかし、クリントン国務長官はこの問題では柔軟に対応、先の会見で、ハッカニグループをテロ組織に指定することを検討している、としながらも、パキスタンが対テロ戦争で協力してきたことも評価した。明らかに、マレン議長やパネッタ国防長官らはパキスタンに対して強い圧力を加える「強硬派」の役目を演じているが、対照的にクリントン国務長官は「柔軟派」としてパキスタンをなだめる役割を演じており、オバマ政権は両者の役割分担によって何とかパキスタンとの関係を維持する構えのようだ。

カテゴリ: 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
春名幹男(はるなみきお) 1946年京都市生れ。国際アナリスト、NPO法人インテリジェンス研究所理事。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授、早稲田大学客員教授を歴任。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『米中冷戦と日本』(PHP)、『仮面の日米同盟』(文春新書)などがある。
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