T
投稿者:
The Sovereign
2012年06月30日12時56分
ムルスィー氏はまだ何もしていない
「まだ何もしていない」と言っても、悪い意味ではない。アメリカのメディアは、ムルスィー政権の下でのイスラエルとの関係、エジプトの異教徒、特にキリスト教徒への影響などを心配している。日本のメディアは、池内さんが強調する初の「文民大統領」という言葉が新鮮に感じるほど、「イスラム主義の大統領」一色である。いずれにしても、まだ新政権が何もしていないのに、憶測に基づいた懸念が先行している。
でも、冷静に考えると、欧米も日本も、注目すべきはムルスィー政権がどのような政策を打ち出すかである。懸念すべきは、新政権がテロ組織を支援したり、イスラエルとの関係をいたずらに悪化させたりする政策をとったときである。その意味で、アメリカは過去にムバラク政権を支援していた後ろめたさもあるかもしれないが、それはともかくとして、新政権の個々の政策がアメリカの国益にかなうか判断していくべきだし、実際にそういう判断をしていくのではないかと思う。日本のメディアは、イスラム主義がどういう意味なのかわかってもいないのに政党の名前だけで「イスラム主義」などと言い募って中身のない議論をするのはやめて、新政権が何をするかに注目すべきであろう。
それにしても、フォアサイトを読んでいれば池内さんのリポートが入ってくるのでエジプトで何が起こっているかわかるが、日本の新聞報道(テレビのニュースは論外)を見ていると、エジプトで何が起きていて、それを国際政治と世界史の中できちんと考えて理解するという作業が、日本の新聞報道だけでできるとは思えない。そのような報道にしか接していない人が、外国人と話して、「ところでエジプトのここ数年の政治の展開をどう思う?」と英語で聞かれて、話ができるのだろうか。これは、英語力の問題ではない。
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K
投稿者:
K. S.
2012年07月02日07時13分
ムルスィー?モルシ?
記事内容と関係がなくて恐縮ですが
どちらの発音の方が望ましいのでしょうか?
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池
投稿者:
池内恵
2012年07月03日11時27分
ムルスィーの発音
ムルスィーの名前のアラビア語→アルファベットの転写はMuhammad Mursiで、発音は「ムルスィー」が正確です。これを「モルシ」としてしまうと、日本語ではMorshiと発音されます。すると、アラブ圏でなくとも、どこの国でもまず通じません。スィ(si)とシ(shi)は多くの言語では、明確に弁別されます。
日本の場合、新聞やテレビ局は、現地語が分からない本社の人たちが英語の記事から見て適当にカタカナを当て、そのまま使い続けます。長母音は英語表記では分からないことが多いので、適当に入れます(!)。ですので、必要のないところに長母音が入り、必要なところに入っていないことが頻繁に起こります。
既に日本語で間違った発音でなじんでしまったものまで、何もかもアラビア語の発音に近づけて表記を直せ、とは私は言いませんが(ナセル→ナースィルなど)、今どきアラビア語をできる記者も多いのですから、新たに報道する人の場合は、ある程度まともな表記をしておいた方がいいと思います。
エジプトでは、アルファベットに転写する場合、Mursiという正則の転写法ではなく、Morsiと転写している場合があります。そのため「モ」ルシとなったようです。しかしエジプトのテレビでも明確に「ムハンマド・ムルスィー」と発音しているので、それに近い日本語表記を取るのが当然でしょう。日本にいながらアラビア語のテレビも極めて容易に聴取できます。
しかしメディア産業には「無謬性」の原則があるようで、一度書いてしまうと二度と変えないのです。
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K
投稿者:
K. S.
2012年07月04日15時20分
池内様 ありがとうございました
やはりモルシでは通じませんでしたか。
アラビア語の英語への転写方法がいくつあるのか存じませんが、特別な理由がない限り、発音に忠実な呼び方をしてほしいものです。
それにしても、「長母音は英語表記では分からないことが多いので、適当に入れます」の下りは、今も信じ難い。そんな適当な仕事でいいんですか?人様の名前を適当に呼ぶのは、一般的には許されないことだと思うのですが。
報道機関の言い分があればうかがいたいものです。
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T
投稿者:
The Sovereign
2012年07月06日05時25分
アラビア語にも長母音があるんですね
英語とちがって、アラビア語には長母音があるということでしょうか。日本語にも長母音が合って、「おばさん」と「おばあさん」は明確に区別されますが、長母音のない言語(英語、中国語、などなど)しか知らない人が日本語を勉強するときは、この区別を聞き取るのが難しいようです。英語でも、日本語では全部「ア」になってしまうような母音がいくつかあり、アメリカ人に「大して変わらないでしょ」と言うと、「全然ちがう」と言われます。
ところで、池内さんの説明を読んで改めて思ったのですが、日本の中東報道は英語報道経由なんですね。
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「まだ何もしていない」と言っても、悪い意味ではない。アメリカのメディアは、ムルスィー政権の下でのイスラエルとの関係、エジプトの異教徒、特にキリスト教徒への影響などを心配している。日本のメディアは、池内さんが強調する初の「文民大統領」という言葉が新鮮に感じるほど、「イスラム主義の大統領」一色である。いずれにしても、まだ新政権が何もしていないのに、憶測に基づいた懸念が先行している。
でも、冷静に考えると、欧米も日本も、注目すべきはムルスィー政権がどのような政策を打ち出すかである。懸念すべきは、新政権がテロ組織を支援したり、イスラエルとの関係をいたずらに悪化させたりする政策をとったときである。その意味で、アメリカは過去にムバラク政権を支援していた後ろめたさもあるかもしれないが、それはともかくとして、新政権の個々の政策がアメリカの国益にかなうか判断していくべきだし、実際にそういう判断をしていくのではないかと思う。日本のメディアは、イスラム主義がどういう意味なのかわかってもいないのに政党の名前だけで「イスラム主義」などと言い募って中身のない議論をするのはやめて、新政権が何をするかに注目すべきであろう。
それにしても、フォアサイトを読んでいれば池内さんのリポートが入ってくるのでエジプトで何が起こっているかわかるが、日本の新聞報道(テレビのニュースは論外)を見ていると、エジプトで何が起きていて、それを国際政治と世界史の中できちんと考えて理解するという作業が、日本の新聞報道だけでできるとは思えない。そのような報道にしか接していない人が、外国人と話して、「ところでエジプトのここ数年の政治の展開をどう思う?」と英語で聞かれて、話ができるのだろうか。これは、英語力の問題ではない。