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投稿者:AprilHare2012年12月24日00時06分
棚ぼたを得た自民に改革ができるか?
 今回の選挙で、自民は議席こそ大幅に増やしましたが、実は得票はむしろ減っています。以下、過去5回のデータをまとめてみました。

第42回(2000年):
小選挙区では2495万票(得票率40.97%、議席率59.0%)
比例代表では1694万票(得票率28.31%、議席率31.1%)
第43回(2003年):
小選挙区では2609万票(得票率43.85%、議席率56.0%)
比例代表では2066万票(得票率34.96%、議席率38.3%)
第44回(2005年の郵政選挙):
小選挙区では3252万票(得票率47.77%、議席率73.0%)
比例代表では2589万票(得票率38.18%、議席率42.8%)
第45回(2009年の政権交代選挙):
小選挙区では2730万票(得票率38.68%、議席率21.3%)
比例代表では1881万票(得票率30.6%、議席率24.8%)
第46回(2012年):
小選挙区では2564万票(得票率43.0%、議席率79.0%)
比例代表では1662万票(得票率27.6%、議席率31.7%)

 自民党が議席を増やした理由の分析に異存はありませんし、今回みたいに得票数を減らしながら議席を三倍以上に増やせる小選挙区制度は変えなければなりません。
 ですが心配なのは、少ない支持でも勝てる現状に味をしめた自民党が、現状を変える気になるかどうかです。民主党の惨敗により、現在自民党と並んで「二大」と呼べる政党はなくなりました。従って、小選挙区制と自民一強体制が続く限り自民党政権は安泰、と自民党が考えても不思議ではありません。
 それでも、民主党の影響を抜きにしても得票数の低下傾向は止まっていません。その意味で、自民党の決断に興味があります。支持にふさわしい議席率に落ちてでも制度改革を行うのか、アンチ自民党を存在意義とする不安定な第二極(要は第二の民主党)によって再び潰されるか、でなければ果てしなく民意から乖離しつづけるか。

 民主党の今後については、このまま消えるのでもなく制度改革を待つのでもないとしたら、たとえ野合だろうと同じパターンだろうと、第二極に参加するしかないでしょう。「アンチ自民党」から脱皮できるかどうかは将来の話で、とにかく団結しないと今度の選挙を繰り返すだけです。
「小選挙区制は二大政党制を促進する」と言いますが、逆に二大政党制でないと小選挙区制ではまともに民意が反映されないからこそ、二大政党制を促進しなければならず、成功ケースにおいては結果として促進されただけなのだと思います。
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投稿者:ranpou2012年12月24日22時00分
詳細確認してませんが、先ほどTVで、今回の選挙では、各小選挙区毎に1万票前後の白票があり、これも過去にないことだったと言われてました。

白票は、投票率の計算にはカウントされますが、得票率の計算にはカウントされないのではないかと思います。

よって、過去の選挙と比較するなら、白票含めた上での得票率を計算すれば、今回の乖離状況はもっと拡大するかもしれません。
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投稿者:AprilHare2012年12月25日18時18分
もはや中小政党規模と化した「白票党」
 無効票についてはあまり注意していませんでしたが、少し調べてみると衝撃的なデータが出てきました。曰く、

・衆院選小選挙区の無効投票率は全国計で前回比1.32ポイント増の3.31%。
・都全体の無効投票率は4.20%で、前回(2.23%)の約倍。
・都内の最大は12区で、10.83%(前回比7.59ポイント増増加幅)。民主も自民もいなくて、未来、公明、共産、幸福が立候補していた(公明が圧勝)。
・埼玉(15選挙区)でも11万近い無効票で過去最多(次に多いのは2009年の9万余り)。

読売新聞:衆院選 無効投票率前回の倍に
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/tokyo23/news/20121219-OYT8T00153.htm?from=popin

同:意図的な白票?11万の最多「無効票」出た県
http://www.yomiuri.co.jp/election/shugiin/news/20121218-OYT1T01663.htm?from=popin

 ranpouさんのいうTVニュースについてはわかりませんが、全国での合計有効票が約6000万票だったので、そこから計算される全国平均での一選挙区あたり無効票は約6850票になります。一万に達するかどうかは地域によってばらつくかと思いますが、一部地域でのイレギュラーケースとして無視できる問題ではありません。

 なお、今回の無効投票率3.31%を党派への投票率と比較すると、自民、民主、維新、未来、みんな、共産に次ぐナンバー7になります。それを下回る議席持ち党派は国民新党(1)、公明(9)、社民(1)、無所属(5)です。
 前回の無効投票率1.99%でも、民主、自民、共産、無所属に次ぐナンバー5になります。それを下回る議席持ち党派は社民(3)、国民新党(3)、新党日本(1)、みんな(2)です。
 ただの棄権であれば「公民としての意識が低い」という解釈もありますが、無効票というのは投票する意思はあっても特定の投票先を選択しなかったことを示す、ある意味では全候補者に対する不信任(そして、選択に値する候補者を一人も用意できなかった選挙システムそのものに対する不信任)ではないでしょうか?
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投稿者:The Sovereign2013年01月06日03時40分
衆議院選挙制度の最大の問題点は重複立候補

今回の選挙で自民党を「勝たせすぎた」最大の原因は重複立候補です。現在の選挙制度では、同じ候補者が小選挙区と比例代表の両方に立候補することができます。この制度の下では、今回の選挙のように自民党・民主党の二大政党以外の政党が乱立するような状況になると、小選挙区で議席を獲得できる見込みがない政党でも、「とりあえず」なるべく多くの選挙区に候補者を立てて、政党を「告知」するのが合理的な戦略になります。

つまり、現在の衆議院選挙制度の問題は、小選挙区制そのものにあるのではなく、重複立候補を認めることによって、小選挙区制の特性を発揮できていないという点にあります。言い方を換えれば、50%を取らなくては勝てないはずの小選挙区制で20-30%の得票で勝ててしまうのは、重複立候補が認められているためです。政治学者が言う「小選挙区制の下では二大政党に収斂する」というのは本当ですが、重複立候補を認めている限り、それぞれの選挙区で候補者がアピールする有権者の幅を広げるインセンティブが十分にないので、「政権交代可能な二大政党」に政党が収斂していきません。

そして、重複立候補は勝者に大勝をもたらし、敗者に大敗をもたらします。問題は、大勝してしまうと与党にとっては選挙に勝ったときが党勢のピークになってしまい、選挙での大勝がその後の政策決定のモメンタムにつながっていきません。「勝ちすぎ」てしまったことによって「間違って」当選してしまった議員は次の選挙で落選する確立が高いので、執行部の締め付けも効きません。

衆議院選挙でどんなに大勝しても参議院には何の影響もないので、「ねじれ」の解消にも役に立ちません。つまり、現在の選挙制度は、重複立候補を認めていることによって、選挙で大勝した政党が円滑に政策決定をできる仕組みになっていないのです。政治が「決められない」という問題は、小選挙区制が原因なののではなく、重複立候補を認めているのが原因です。
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投稿者:AprilHare2013年01月15日01時01分
重複立候補が中政党の台頭生存を助ける面も

 小選挙区で勝ち目の少ない中堅政党が告知目的で候補者を立てるというのは、それなりに納得のいく話です。実際、維新もみんなの党も、小選挙区候補者の当選率は約一割(未来に至っては111候補中当選はたったの二人)でした。また、これらの中堅政党は小選挙区議席よりも比例議席の方がずっと多くなっています。小選挙区は宣伝の場と割り切って比例で稼ぐビジネスモデル、もといエレクションモデルだと言われても仕方がないでしょう。
 ですが、小選挙区候補が比例にも重複立候補していれば、小選挙区での勝ち目がなくても惜敗率次第で復活の可能性があります。それによって候補者自身にとってのインセンティブも存在するため、中小政党が健闘するという面もあります。また、重複立候補を禁止しても小選挙区には当選の見込みが全くない「バイト候補」を立てるでしょうから、変化はそれほど大きくないかもしれません。
 現制度が導入されてから約20年で一度は民主党による二大政党体制への収斂が発生しましたが、重複立候補のマイナス面(中堅政党として安住してしまう)よりもむしろプラス面(中堅政党が生き延びることができる)の方が大きかったのではないでしょうか?

 それと、勝敗の差が増幅されるのはそもそも小選挙区制の特徴のはずです。