「平和構築」最前線を考える (11)

トランプ政権の「揺らぎ」が招く「アフガン和平交渉」の行き詰まり

2017年9月、ニューヨークで会談したガニ・アフガニスタン大統領(左)とトランプ米大統領(右)(C)AFP=時事
 

 

「9.11」テロ攻撃からちょうど18年が過ぎようとしていた9月7日、ドナルド・トランプ米大統領がツイッターで、アフガニスタンのタリバン勢力との和平交渉の崩壊を宣言した。大統領別荘であるキャンプデービッドにタリバン指導者層とアシュラフ・ガニ大統領を招く予定もあったことも明かし、波紋を呼んだ。

 トランプ大統領によれば、交渉崩壊の原因は、米兵1名が死亡した9月5日に起こったカブールでの自爆攻撃だという。しかし、この種の事件は、アフガニスタンでは決して珍しいものではない。トランプ大統領は、交渉の大詰めでこのような事件を起こすのは許せない、と本当に思ったのかもしれない。だが、タリバン指導部の高次元の政策決定で起こった事件だったようにも見えない。

カテゴリ: 政治 社会 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
篠田英朗(しのだひであき) 東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授。1968年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、同大学大学院政治学研究科修士課程、ロンドン大学(LSE)国際関係学部博士課程修了。国際関係学博士(Ph.D.)。国際政治学、平和構築論が専門。学生時代より難民救援活動に従事し、クルド難民(イラン)、ソマリア難民(ジブチ)への緊急援助のための短期ボランティアとして派遣された経験を持つ。日本政府から派遣されて、国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)で投票所責任者として勤務。ロンドン大学およびキール大学非常勤講師、広島大学平和科学研究センター助手、助教授、准教授を経て、2013年から現職。2007年より外務省委託「平和構築人材育成事業」/「平和構築・開発におけるグローバル人材育成事業」を、実施団体責任者として指揮。著書に『平和構築と法の支配』(創文社、大佛次郎論壇賞受賞)、『「国家主権」という思想』(勁草書房、サントリー学芸賞受賞)、『集団的自衛権の思想史―憲法九条と日米安保』(風行社、読売・吉野作造賞受賞)、『平和構築入門』、『ほんとうの憲法』(いずれもちくま新書)、『憲法学の病』(新潮新書)など多数。
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