やっぱり残るは食欲
やっぱり残るは食欲 (27)

酒と和田さんの日々

執筆者:阿川佐和子 2020年1月26日
カテゴリ: カルチャー
エリア: アジア
「和田さんが好きなカクテルがなんであったのか、ちっとも思い出せない」

 

 今、私の手元に濃い青色をした大判の分厚い本がある。青色表紙の真ん中には、カラフルな雄鶏の絵付きカクテルグラスが1つ、威容を放っている。題して「THEBARRADIOCOCKTAIL BOOK」。2003年に改訂版として幻冬舎から出版されたもので、著者は、日本屈指のバーテンダーでバー・ラジオのオーナーでもある尾崎浩司氏だ。

 私はこのとびきりお洒落なカクテル事典を、尾崎氏本人からいただいた……と記憶する。かつて、和田誠氏に連れられてバー・ラジオにちょくちょく足を運んでいた時期がある。といっても、私が訪れたのはもっぱら表参道のサード・ラジオである。近くに銭湯もあるような静かな住宅街の一角に、忽然と現れるヨーロッパのロッジ風一軒家で、1階がバー、2階は食事もできるしつらえになっていた。もちろん今でも営業はしているが、あるときを境に食事のサービスは終了し、バーのサービスのみと聞いている。

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執筆者プロフィール
阿川佐和子 1953年東京生まれ。報道番組のキャスターを務めた後に渡米。帰国後、エッセイスト、小説家として活躍。『ああ言えばこう食う』(集英社、檀ふみとの共著)で講談社エッセイ賞、『ウメ子』(小学館)で坪田譲治文学賞、『婚約のあとで』(新潮社)で島清恋愛文学賞を受賞。他に『うからはらから』(新潮社)、『正義のセ』(KADOKAWA)、『聞く力』(文藝春秋)など。
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