やっぱり残るは食欲
やっぱり残るは食欲 (35)

ウチ寿司

執筆者:阿川佐和子 2020年10月3日
カテゴリ: カルチャー
エリア: アジア
「そうだ、ちらし寿司を作ろう!」

 

(7月28日発売の新潮社『波』より転載しています)

 自粛生活を続けているうちに、たまらなく食べたくなったのが、寿司である。

 「へっ、らっしゃい!」

 威勢の良いかけ声に迎えられ、ひんやりとした白木のカウンター席に座ると、目の前のガラスケースの水滴の向こうにイカ、コハダ、マグロ、赤貝など新鮮なネタが行儀よく並んでいる。

 差し出されたアツアツのおしぼりで手を拭きながら、ネタを吟味する。

 ま、私がよく行く近所のお寿司屋さんは、「へっ、らっしゃい!」というほど威勢がいいわけではなく、いつも「はーい、いらっしゃーい」と親戚のおじさんのような笑顔で迎えてくれる優しい大将と、いつも横移動小走りをしている助手のおにいちゃん、そしてアツアツおしぼりとボトルキープ焼酎をさりげなく棚から下ろして出してくれる大将の奥さん。極めて家庭的な店である。

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執筆者プロフィール
阿川佐和子 1953年東京生まれ。報道番組のキャスターを務めた後に渡米。帰国後、エッセイスト、小説家として活躍。『ああ言えばこう食う』(集英社、檀ふみとの共著)で講談社エッセイ賞、『ウメ子』(小学館)で坪田譲治文学賞、『婚約のあとで』(新潮社)で島清恋愛文学賞を受賞。他に『うからはらから』(新潮社)、『正義のセ』(KADOKAWA)、『聞く力』(文藝春秋)など。
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