
「そうだ、ちらし寿司を作ろう!」
(7月28日発売の新潮社『波』より転載しています)
自粛生活を続けているうちに、たまらなく食べたくなったのが、寿司である。
「へっ、らっしゃい!」
威勢の良いかけ声に迎えられ、ひんやりとした白木のカウンター席に座ると、目の前のガラスケースの水滴の向こうにイカ、コハダ、マグロ、赤貝など新鮮なネタが行儀よく並んでいる。
差し出されたアツアツのおしぼりで手を拭きながら、ネタを吟味する。
ま、私がよく行く近所のお寿司屋さんは、「へっ、らっしゃい!」というほど威勢がいいわけではなく、いつも「はーい、いらっしゃーい」と親戚のおじさんのような笑顔で迎えてくれる優しい大将と、いつも横移動小走りをしている助手のおにいちゃん、そしてアツアツおしぼりとボトルキープ焼酎をさりげなく棚から下ろして出してくれる大将の奥さん。極めて家庭的な店である。

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