やっぱり残るは食欲
やっぱり残るは食欲 (42)

お手元バナナ

執筆者:阿川佐和子 2021年4月3日
タグ: 日本
エリア: アジア
さっそく「バナナブレッドレシピ」で検索すると、まあ、出てくる出てくる……(写真はイメージです)

 

  バナナを買った。一房に五本ついている。この五本をどういうふうに食べようか。じっと黄色い房を見つめる。

 バナナのおばちゃんという人がいた。名前がバナナなのではない。ウチに来るとき必ずバナナを持ってきてくださるおばちゃんだったからだ。松原文枝という名のその方は若い頃、父と一緒に同人誌を出す仲間の一人で、もの書きを生業にしていらした。ふくよかな身体を着物で包み、真っ赤な口紅が塗られた口元を緩ませて、しゃがれ気味の声でいつもバナナを私たち子供の前に差し出した。

カテゴリ: カルチャー
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執筆者プロフィール
阿川佐和子 1953年東京生まれ。報道番組のキャスターを務めた後に渡米。帰国後、エッセイスト、小説家として活躍。『ああ言えばこう食う』(集英社、檀ふみとの共著)で講談社エッセイ賞、『ウメ子』(小学館)で坪田譲治文学賞、『婚約のあとで』(新潮社)で島清恋愛文学賞を受賞。他に『うからはらから』(新潮社)、『正義のセ』(KADOKAWA)、『聞く力』(文藝春秋)など。
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