排出権ビジネス「EU・アメリカの闘い」だった気候変動サミット

グリーンに群がるマネーと政治の火花

「46%削減」に現実的な対策をとれるのか(気候変動サミットで演説する菅義偉首相と小泉進次郎環境相・右=(c)時事)
米大統領選で多くのファンド運用者がバイデン支持を打ち出したのは、環境保護がグローバル市場のメインテーマとなるのを見越したからだ。各国が温暖化ガス削減の高い目標を掲げる舞台裏では、自国有利なルール作りで新たな産業や投資を囲い込もうとするリアルで容赦ない野心がうごめいている。

 ニューヨークダウ工業株30種平均など米国株、ビットコインをはじめとする暗号資産(仮想通貨)が高騰し、その裏側ではファミリーオフィス(富裕層の資産管理会社)やSPAC(特別目的買収会社)が巨額資金を集め、うごめいている。そして世界の巨大マネーが新たな矛先を向けている分野がある。グリーン(環境)だ。

 排出権取引の宴の主役は、新しい儲け口にひときわ鋭い嗅覚を発揮するヘッジファンドの資金運用担当者たちだ。米大統領選の帰趨が定まらなかった昨年夏の時点で、排出権市場の関係者は「2022年にはEUの排出権価格は1トン当たり40ユーロに上昇するだろう」という見通しを披露していた。当時の価格は30ユーロ手前だった。

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執筆者プロフィール
滝田洋一(たきたよういち) 1957年千葉県生れ。日本経済新聞社特任編集委員。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」解説キャスター。慶應義塾大学大学院法学研究科修士課程修了後、1981年日本経済新聞社入社。金融部、チューリヒ支局、経済部編集委員、米州総局編集委員などを経て現職。リーマン・ショックに伴う世界金融危機の報道で2008年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。複雑な世界経済、金融マーケットを平易な言葉で分かりやすく解説・分析、大胆な予想も。近著に『世界経済大乱』『世界経済 チキンゲームの罠』『コロナクライシス』など。
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