「アフガン撤退」が見せつけた米国の無力
――「空白」地帯で“敵対国の直接対峙”が高める戦争の危機

執筆者:杉田弘毅 2021年6月9日
エリア: アジア 中東 北米
バグラム空軍基地を飛び立つ、米軍のC17大型輸送機。アフガン撤退もこうして行われるのか (C)AFP=時事
アフガン撤退をバイデン大統領から告げられた時、米軍トップは驚きの声を上げたという。しかし現実に“米軍統治”はうまくいかず、米国の無力は明らかだったのだ。新たな「空白」は地政学的にどう塗り替えられるのか――。
 

 米国が「建国史上最長の戦争」であるアフガニスタン戦争から兵力を全面的に撤退させる。9・11で始めたアフガニスタンへの軍事介入はちょうど20年で終わることになる。

 ユーラシア大陸のど真ん中にあるアフガニスタンを米国が放棄することは、どんな波及効果を地域や世界にもたらすだろうか。「空白」を埋めるのはどの国か、アル・カイダ、「イスラム国(IS)」などのテロ組織がテロ攻撃の拠点を構えるのか、そして本当に米国はこの国を放棄するのか、などと浮かぶ疑問に明確な答えはない。唯一言えるのは、米国抜きでのユーラシアの地域秩序づくりが前に進む、ということだろう。

カテゴリ: 政治 軍事・防衛 社会
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執筆者プロフィール
杉田弘毅(すぎたひろき) 共同通信社特別編集委員。1957年生まれ。一橋大学法学部を卒業後、共同通信社に入社。テヘラン支局長、ワシントン特派員、ワシントン支局長、編集委員室長、論説委員長などを経て現職。安倍ジャーナリスト・フェローシップ選考委員、東京-北京フォーラム実行委員、明治大学特任教授なども務める。多彩な言論活動で国際報道の質を高めてきたとして、2021年度日本記者クラブ賞を受賞。2021年、国際新聞編集者協会理事に就任。著書に『検証 非核の選択』(岩波書店)、『アメリカはなぜ変われるのか』(ちくま新書)、『入門 トランプ政権』(共同通信社)、『「ポスト・グローバル時代」の地政学』(新潮選書)、『アメリカの制裁外交』(岩波新書)など。
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