悪党たちの中華帝国
悪党たちの中華帝国 (7)

馮道――無節操の時代(下)

カオスの帝国――五代

執筆者:岡本隆司 2021年7月24日
タグ: 中国
エリア: アジア
最後に馮道(右)を重用した郭威(後周の太祖=左)

 明宗・李嗣源は根っからの軍人であって、文字も満足にかけない。しかし武略にすぐれた歴戦の老将である。甘苦の経験も豊富、平衡感覚にすぐれたリアリストだったから、その施政はほどなく、混乱した世情を安定させた。乱世の五代で、屈指の名君とされる。

名君

 人材の鑑識・登用にもすぐれていた。文武にすぐれた臣下を集めたなか、とりわけ文に劣る自身に鑑みてか、馮道の文才と人品には惚れ込んでいたようである。

 それ以前の門閥主義の貴族制では、何より家柄と容姿が重要で、この時期の官界もそんな通念はぬけきっていない。パッとしない門地・風采の馮道には、必ずしも有利ではなかった条件ながら、明宗はそんな俗習にまどわされることはなかった。

カテゴリ: 政治 社会 カルチャー
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執筆者プロフィール
岡本隆司 京都府立大学文学部教授。1965年、京都市生まれ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程満期退学。博士(文学)。専門は近代アジア史。2000年に『近代中国と海関』(名古屋大学出版会)で大平正芳記念賞、2005年に『属国と自主のあいだ 近代清韓関係と東アジアの命運』(名古屋大学出版会)でサントリー学芸賞(政治・経済部門)、2017年に『中国の誕生 東アジアの近代外交と国家形成』で樫山純三賞・アジア太平洋賞特別賞をそれぞれ受賞。著書に『李鴻章 東アジアの近代』(岩波新書)、『近代中国史』(ちくま新書)、『中国の論理 歴史から解き明かす』(中公新書)、『叢書東アジアの近現代史 第1巻 清朝の興亡と中華のゆくえ 朝鮮出兵から日露戦争へ』(講談社)など多数。
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