「五輪が取り持つ恋」もあり:近代五輪と欧州王室

執筆者:君塚直隆 2021年7月23日
タグ: イギリス 日本
エリア: アジア ヨーロッパ
2012年7月27日、ロンドン五輪の開会式に臨んだエルザべス女王(中央左)。右隣はジャック・ロゲIOC会長(当時)。 ©AFP=時事
いよいよ今日、開会式を迎える二度目の「東京五輪」。開会を宣言するのは天皇陛下である。君主制を維持する諸国においては、五輪と王室の関係は切っても切れないほど深い。大半の競技が無観客となり、予定されていた各国の王族を含むVIPの来日もキャンセルが相次ぐ今回の東京大会を機に、改めて五輪と王室の歴史を振り返る。

 

女王陛下の007

 「こんばんは、ボンドさん!」。机に向かって書き物をしていた淡いピンクのドレスに包まれた老婦人が突然振り返り、笑顔でこう挨拶した。会場に鎮座まします大スクリーンに映し出されたその姿を見て、数万の観客がいっせいに大歓声を上げた。

 これは2012年7月のロンドン五輪開会式での一コマである。それまで会場では中世の農村が産業革命で様変わりするイギリスの歴史を演劇のかたちで披露していたが、場面が一転して大スクリーンにバッキンガム宮殿が映し出された。6代目の「ジェームズ・ボンド」ことダニエル・クレイグが007を演じ、ロンドン名物の黒塗りタクシーに乗って宮殿に到着し、女王陛下の執務室へと通され、上記の老婦人に面会する。この老婦人こそ誰あろう「本物」のエリザベス2世女王陛下だったのだ。

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執筆者プロフィール
君塚直隆 関東学院大学国際文化学部教授。1967年東京都生まれ。立教大学文学部史学科卒業。英国オックスフォード大学セント・アントニーズ・コレッジ留学。上智大学大学院文学研究科史学専攻博士後期課程修了。博士(史学)。東京大学客員助教授、神奈川県立外語短期大学教授などを経て、関東学院大学国際文化学部教授。専攻はイギリス政治外交史、ヨーロッパ国際政治史。著書に『立憲君主制の現在』(新潮選書/2018年サントリー学芸賞受賞)、『ヴィクトリア女王』(中公新書)、『エリザベス女王』(中公新書)、『物語 イギリスの歴史』(中公新書)、『ヨーロッパ近代史』(ちくま新書)、『悪党たちの大英帝国』(新潮選書)、『王室外交物語』(光文社新書)他多数。
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