難民たちの船は民主主義という「不確かな海」を漂流する

Omar El Akkad『What Strange Paradise』

執筆者:植田かもめ 2021年9月19日
カテゴリ: カルチャー
エリア: 中東 北米

Omar El Akkad『What Strange Paradise

いまや世界の100人に1人が「難民」と言われている。すでに欧州各国では難民と隣り合わせの生活が営まれているが、彼ら難民と一般市民の間を隔てる壁は、民主主義の「試練」としてわれわれの前に現れる。エジプト・カイロ出身、アメリカ在住の若き小説家が最新作を通して訴える「排除と分断」を超えた先にあるものとは。

 先日閉会した東京2020オリンピックの開会式で2番目に入場行進をした国・地域をご存知だろうか。

 オリンピック誕生の地ということで毎回先頭を飾っているギリシャに続いて登場したのは「難民選手団」だ。紛争などの理由で祖国を離れたアスリート達で構成されており、11カ国出身の29名の選手で結成されていた。

 そもそも難民とは誰か。UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)等が難民の定義として参照する1951年の「難民の地位に関する条約」によれば、難民とは「人種、宗教、国籍、政治的意見やまたは特定の社会集団に属するなどの理由で、自国にいると迫害を受けるかあるいは迫害を受けるおそれがあるために他国に逃れた」人々を指す。その数は近年増加傾向にあり、UNHCRの報告書によれば2020年末の時点で全世界で8240万人に達する(自国内で避難生活を送る国内避難民等を含む)。世界人口が78億人だとするとおよそ100人に1人が難民である。タリバンが実権を掌握したアフガニスタンでは、空港から離陸する飛行機を追って群れをなす人々の映像が世界に配信された。同じくUNHCRによる予測では、アフガニスタンで2021年末までに新たに発生する難民の数は最大で50万人にのぼるとも予想されている。

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執筆者プロフィール
植田かもめ 洋書を中心とした書評家。Webメディアや雑誌への寄稿を行う。フィクション、アート、ビジネス、テクノロジー、科学などジャンル問わずに未訳本を紹介するブログ「未翻訳ブックレビュー」を運営。本業は経営やITのコンサルタント。
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