対テロ戦20年の米印接近、そしてインドに残された「大きな重荷」

執筆者:広瀬公巳 2021年9月23日
エリア: アジア
モディ氏へのビザ発給停止はオバマ政権時代に解除された ⓒAFP=時事
アメリカの安全保障戦略にとって南アジアの核となることが期待されてきたインドは、一方でアメリカとのディール外交で実に様々なものを得てきたと言える。アフガニスタンから米軍が撤退した今、パキスタンと中国という対立国との緩衝地帯を失ったインドは大きな岐路に立たされた。

 米軍が撤退した後のアフガニスタンの面倒を誰が見るのか。アメリカが後を託せる国を見つけるのは難しい。アフガニスタンと国境を接するのはアメリカと対立するイラン、ロシアの勢力圏にある中央アジア諸国、そしてイスラム過激派の制御ができないパキスタン。いずれの国もイスラム武装組織のタリバンを相手に交渉しアフガニスタンを安定した民主的な国家へと導くのは難しいだろう。

 地域大国となったインドが対テロ、そして対中国のキーストーンとしての役割を果たす期待が高まるが、インドはあえてこの火中の栗を拾うのか。今後のインドの出方を考えるためにまず、これまでの米印関係の流れを振り返っておきたい。

カテゴリ: 政治 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
広瀬公巳(ひろせひろみ) 1963年大阪市生まれ。国際ジャーナリスト、岐阜女子大学南アジア研究センター特別客員教授。東京大学教養学科卒業後、NHKニューデリー支局長、解説委員などを歴任し約50カ国の現場を取材する。著書に、スリランカの民族紛争を扱った『自爆攻撃 私を襲った32発の榴弾』(第34回大宅賞最終候補作、日本放送出版協会)、『インドが変える世界地図 モディの衝撃』(文春新書)など。日本南アジア学会、日印協会、日本マス・コミュニケーション学会会員。
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