悪党たちの中華帝国
悪党たちの中華帝国 (12)

朱子――封建主義を招いた「道学者先生」(上)

最強の最小帝国――宋

執筆者:岡本隆司 2021年10月9日
カテゴリ:
南宋を打ち立てた高宗(左)の治世下で、朱子(右)は生まれた

 

千年以上、天下をこぞって紙屑の中に放りこみ、身心気力を消尽させ、虚弱で病気がち、役立たずな人々を作ってきたのは、すべて晦庵(朱子)のせいである。(顔元『朱子語類評』)

 朱子学といえば儒教の最右翼、日本の封建制度をささえたイデオロギーでもある。封建制度・門閥制度を「親の敵」といい、「漢学を敵にし」、儒教主義を棄てない中国・朝鮮を「謝絶すべき悪友」と断じたのは、いうまでもなく福澤諭吉。日本では19世紀末・明治維新を迎えてようやくこのような発言が出て、やがて違和感もなくなった。これ以後、われわれとしては、朱子学・儒教とは封建主義の代名詞であって、近代にまったく背反する思想とみなすのが普通である。もはや死語にひとしいながら「道学者先生」という蔑称すらあった。

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執筆者プロフィール
岡本隆司 京都府立大学文学部教授。1965年、京都市生まれ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程満期退学。博士(文学)。専門は近代アジア史。2000年に『近代中国と海関』(名古屋大学出版会)で大平正芳記念賞、2005年に『属国と自主のあいだ 近代清韓関係と東アジアの命運』(名古屋大学出版会)でサントリー学芸賞(政治・経済部門)、2017年に『中国の誕生 東アジアの近代外交と国家形成』で樫山純三賞・アジア太平洋賞特別賞をそれぞれ受賞。著書に『李鴻章 東アジアの近代』(岩波新書)、『近代中国史』(ちくま新書)、『中国の論理 歴史から解き明かす』(中公新書)、『叢書東アジアの近現代史 第1巻 清朝の興亡と中華のゆくえ 朝鮮出兵から日露戦争へ』(講談社)など多数。
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