悪党たちの中華帝国
悪党たちの中華帝国 (15)

永楽帝――甥殺しの簒奪者(下)

再生した帝国・変貌する帝国――明

執筆者:岡本隆司 2021年11月27日
タグ: 中国
エリア: アジア
太祖洪武帝の“一族主義”と政権自体の構造矛盾が、叔父・永楽帝(右)による甥・建文帝(左)からの簒奪につながった

   皇帝がすべてを直轄する政体に移行した。そうはいっても、現実には文字どおりの直轄など、できるものではない。目・手のとどかない地方では、出先なしには収拾がつかないし、中央でも自らを補佐する機構が必要である。とても皇帝一人で抱えこめるものではなく、信頼できる身代わり・目代わりがどうしても欠かせない。

天下の私物化

 そこで朱元璋は息子たちを地方に配置し、王に任命した。「諸王分封」という。とくに統轄・裁量の権限が必要なのが、モンゴルと対峙して安全保障上、最も重要な万里の長城沿いに置いた諸王であった。かつて地方の兵権を統べた中書省の代替ともいえる。

カテゴリ: 政治 社会 カルチャー
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執筆者プロフィール
岡本隆司 京都府立大学文学部教授。1965年、京都市生まれ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程満期退学。博士(文学)。専門は近代アジア史。2000年に『近代中国と海関』(名古屋大学出版会)で大平正芳記念賞、2005年に『属国と自主のあいだ 近代清韓関係と東アジアの命運』(名古屋大学出版会)でサントリー学芸賞(政治・経済部門)、2017年に『中国の誕生 東アジアの近代外交と国家形成』で樫山純三賞・アジア太平洋賞特別賞をそれぞれ受賞。著書に『李鴻章 東アジアの近代』(岩波新書)、『近代中国史』(ちくま新書)、『中国の論理 歴史から解き明かす』(中公新書)、『叢書東アジアの近現代史 第1巻 清朝の興亡と中華のゆくえ 朝鮮出兵から日露戦争へ』(講談社)など多数。
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