悪党たちの中華帝国
悪党たちの中華帝国 (16)

万暦帝――亡国の暗君(上)

再生した帝国・変貌する帝国――明

執筆者:岡本隆司 2021年12月11日
タグ: 中国 日本
エリア: アジア
明軍(左)をしばしば悩ませた「南倭」倭寇(右)(『倭寇図巻』東京大学史料編纂所蔵
 

万暦は太平の御代、海外諸国は恭順、国内地方は平穏、家々人々も充足していた。もっとも、治に居て乱を忘れず、のぼりつめれば落ちるのみ、という。そうした警戒はどうやら緩みきってしまい、賢明な人士を遠ざけ、宦官・宮女にばかり親しみ、後宮への請託に進物の贈与、いつしか物欲が募って、話題になるのは、どこに金づるがあるか、ばかり。かくて万暦24年、臣下の主謀・建策によって、鉱税の騒擾がはじまった。当時はまさしく土崩瓦解、民間も政府もバラバラ、亡びなかったのが幸運とさえいえる。それでも宮中深くに引きこもり、上奏が来ても応答なし、慣習として根づいてしまい、おいそれとは改まらなかった。よくぞ時の礼部侍郎(文部次官)は、「陛下は国を豊かにしようとなさっただけで、民を苦しめるおつもりではなかった。ところが有象無象の群臣は、民を搾取しなくては己の私腹を肥やせない、と思いこんでいる」と上奏したものである。(『明史紀事本末』巻六五)

カテゴリ: 社会 カルチャー
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執筆者プロフィール
岡本隆司 京都府立大学文学部教授。1965年、京都市生まれ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程満期退学。博士(文学)。専門は近代アジア史。2000年に『近代中国と海関』(名古屋大学出版会)で大平正芳記念賞、2005年に『属国と自主のあいだ 近代清韓関係と東アジアの命運』(名古屋大学出版会)でサントリー学芸賞(政治・経済部門)、2017年に『中国の誕生 東アジアの近代外交と国家形成』で樫山純三賞・アジア太平洋賞特別賞をそれぞれ受賞。著書に『李鴻章 東アジアの近代』(岩波新書)、『近代中国史』(ちくま新書)、『中国の論理 歴史から解き明かす』(中公新書)、『叢書東アジアの近現代史 第1巻 清朝の興亡と中華のゆくえ 朝鮮出兵から日露戦争へ』(講談社)など多数。
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