悪党たちの中華帝国
悪党たちの中華帝国 (18)

王陽明――「異端」者の風景(上)

挫折する近代――明

執筆者:岡本隆司 2022年1月8日
タグ: 中国
エリア: アジア
「正統」朱子(左)に対する「異端」王陽明(右)の登場は、時代の要請だったのか

 

……話題が王守仁に及んで、

「かれは何らはばかるところなく聖人を自任し、朱子を誹謗しました。正道によらず捷径を好む中国の小人も、賛同しております。陳建が『学蔀通辯』を著しまして、これはまさしく異端をせめる正論です。……」

 と申しあげると、君上は「王守仁は才気があり功業もあげている」とおっしゃったので、進み出て、

「王守仁はひねくれた性格で頑固不遜、五常などどうでもよく、一掃してしまってもよい、と思っています。また秦始皇の焚書は、孔子が六経を刪述した意図に合致する、といい、さらに朱子の著述・立論を洪水猛獣の災禍よりも惨い、と誹謗しておりますれば、ひどい邪説でございます。」

カテゴリ: カルチャー
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執筆者プロフィール
岡本隆司 京都府立大学文学部教授。1965年、京都市生まれ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程満期退学。博士(文学)。専門は近代アジア史。2000年に『近代中国と海関』(名古屋大学出版会)で大平正芳記念賞、2005年に『属国と自主のあいだ 近代清韓関係と東アジアの命運』(名古屋大学出版会)でサントリー学芸賞(政治・経済部門)、2017年に『中国の誕生 東アジアの近代外交と国家形成』で樫山純三賞・アジア太平洋賞特別賞をそれぞれ受賞。著書に『李鴻章 東アジアの近代』(岩波新書)、『近代中国史』(ちくま新書)、『中国の論理 歴史から解き明かす』(中公新書)、『叢書東アジアの近現代史 第1巻 清朝の興亡と中華のゆくえ 朝鮮出兵から日露戦争へ』(講談社)など多数。
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