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「米中産業冷戦」時代のアジアビジネス(下)

執筆者:後藤康浩 2022年1月18日
エリア: アジア 北米
 
アメリカの対中経済姿勢が厳しさを増し、経済安全保障という合言葉で足並みを揃える日本。しかし依然として最も重要なビジネス相手でもある中国との関係で必要なのは、相互利益を見極めた「大人の関係」を築くことだ。

後藤 これから中国に待ち受けるのは「産業立地の転換」という試練です。

 先端産業は確実に脱中国を図り、先進国に回帰しています。半導体や電子部品、電子機器などでは、研究開発機能も含めて自国に戻す動きになっています。これはいわば、かつて存在したCHINCOM(対中国輸出統制委員会)の復活であり、「中国の時代」の1側面の終焉でしょう。

「産業立地の転換」という試練

 中国で生産することが最も困難になるのは、ミドルテック、すなわちPCやスマホ、ネットワーク機器など汎用の電子製品群でしょう。こうした製品を中国で組み立てていたらアメリカや同盟国のマーケットで受け入れられなくなる恐れがある。少なくともアメリカの政府調達からは排除されるからです。

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執筆者プロフィール
後藤康浩(ごとうやすひろ) 亜細亜大学都市創造学部教授、元日本経済新聞論説委員・編集委員。 1958年福岡県生まれ。早稲田大政経学部卒、豪ボンド大MBA修了。1984年日経新聞入社。社会部、国際部、バーレーン支局、欧州総局(ロンドン)駐在、東京本社産業部、中国総局(北京)駐在などを経て、産業部編集委員、論説委員、アジア部長、編集委員などを歴任。2016年4月から現職。産業政策、モノづくり、アジア経済、資源エネルギー問題などを専門とし、大学で教鞭を執る傍ら、テレビ東京系列『未来世紀ジパング』などにも出演していた。現在も幅広いメディアで講演や執筆活動を行うほか、企業の社外取締役なども務めている。著書に『アジア都市の成長戦略』(2018年度「岡倉天心記念賞」受賞/慶應義塾大学出版会)、『ネクスト・アジア』(日本経済新聞出版)、『資源・食糧・エネルギーが変える世界』(日本経済新聞出版)、『アジア力』(日本経済新聞出版)、『強い工場』(日経BP)、『勝つ工場』(日本経済新聞出版)などがある。
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