「日韓首脳シャトル外交」復活で進む合意の実現と関係改善

執筆者:西野純也 2023年5月17日
エリア: アジア
トップ間の「シャトル」は復活。今後は各省庁各部署間の対話再開と合意実現へ (C)EPA=時事
3月の尹錫悦大統領訪日からわずか2カ月足らずで、2度目の日韓首脳会談が実現した。歴史認識については韓国世論で厳しい評価はあるものの、「シャトル外交」の復活により、3月会談での合意を着実に実現させ、さらに政府間チャネルの復元へと進むことが期待される。

 尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領のこれまでの努力に報いる訪韓であった。5月7、8日の岸田文雄首相の韓国訪問は、政権発足から一貫して日韓関係の改善のために尽力してきた尹大統領のイニシアチブを高く評価し、それに応える性格の強いものであった。日韓首脳会談後の共同記者会見で岸田首相は、「3月に尹大統領が示された決断力と行動力に改めて敬意を表したい」と述べつつ、「早い時期の訪問に踏み切りました」と当初の考えよりも前倒しで訪韓したことを滲ませた。「日韓関係の強化にかける強い思いを私も共有」しているとも述べた。

尹大統領のイニシアチブを高く評価した対応

 共同会見で岸田首相は、尹政権の対日政策及び現在の日韓関係改善のプロセスに批判的な声を意識して、次の3点について尹政権および韓国民への配慮を見せた。「元徴用工」問題について、日本からの謝罪や賠償支払いなしに韓国内での解決を目指す措置を尹政権が3月に発表して以降、韓国内では尹政権の対日政策を支持するか否かにかかわらず、日本側からの「誠意ある呼応」を求める雰囲気が支配的であった。そうした雰囲気を岸田首相は十分に認知していたに違いない。……

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カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
西野純也(にしのじゅんや) 慶應義塾大学法学部政治学科教授、同大学朝鮮半島研究センター長。慶應義塾大学法学部卒業、同大学大学院法学研究科修士課程卒業、同博士課程単位取得。韓国・延世大学大学院博士課程卒業、政治学博士。専門は現代韓国朝鮮政治、東アジア国際政治、日韓関係。在韓国日本大使館政治部専門調査員、外務省国際情報統括官組織第3国際情報官室専門分析員、ハーバード・エンチン研究所交換研究員、ウッドロー・ウィルソンセンター客員研究員(ジャパン・スカラー)、ジョージ・ワシントン大学シグールセンター客員研究員、慶南大学極東問題研究所招聘研究委員、延世大学統一研究院専門研究員などを歴任。著書に、『激動の朝鮮半島を読みとく』(編著、慶應義塾大学出版会、2023年)、『アメリカ太平洋軍の研究』(共著、千倉書房、2018年)、『朝鮮半島の秩序再編』(共編著、慶應義塾大学出版会、2013年)、『転換期の東アジアと北朝鮮問題』(共編著、慶應義塾大学出版会、2012年)など。
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