防衛装備品の海外移転が切り開く「情報共有パートナー連盟」という新戦略

執筆者:岩田清文 2023年5月22日
タグ: 自衛隊
エリア: アジア その他
ウクライナを支援するため、防弾チョッキなどの防衛装備品を航空自衛隊の給油輸送機KC767に積み込む自衛隊員=2022年3月8日、愛知県の航空自衛隊小牧基地 (C)時事
「武器輸出三原則等」などの規制は、国内政治の文脈の中で生まれ、日本の安全保障政策においては自らの手を縛る役割を担ってきた。新たな「国家安全保障戦略」では、海外への装備移転が、日本にとって望ましい安全保障環境の創出のための重要な政策手段となることが明示された。東南アジアに配備される日本製の警戒管制レーダー等を通した「情報共有パートナー連盟」が構築されれば、その具体例となるだろう。

 

 ロシアのウクライナ侵攻から既に1年3カ月近くになるが、自民・公明両党は、やっと防衛装備品の海外移転に関する「防衛装備移転三原則」を見直す協議を始めた。殺傷能力のある装備品の輸出を初めて認めるかどうかが焦点となるだろう。昨年12月、政府が閣議決定した「国家安全保障戦略」には、防衛装備品の海外移転は、侵略や武力による威嚇を受けている国への重要な支援になるとして、移転のルールを厳格に定めた「防衛装備移転三原則」の運用指針などを見直す方針を示している。自民党内には、速やかに一定の結論を出すべきだという意見がある一方、公明党内には慎重な意見も根強い。海外への装備移転は、紛争を助長するおそれがあり、慎重にすべきという考えを反映しているのだろう。

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カテゴリ: 軍事・防衛 政治
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執筆者プロフィール
岩田清文(いわたきよふみ) 元陸上幕僚長。1957年、徳島県生まれ。79年、陸上自衛隊に入隊(防大23期)。第7師団長、統合幕僚副長、北部方面総監などを経て、2013年、第34代陸上幕僚長に就任。16年に退官。著書に『中国、日本侵攻のリアル』( 飛鳥新社)、『自衛隊最高幹部が語る令和の国防』 (新潮新書)。
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