饗宴外交の舞台裏 (46)

見事なまでに早かったフランスの反応

 米国の同時多発テロ発生後、反テロ包囲網結成に向けた外交で、フランスの動きは際立っていた。 テロが起きた九月十一日、シラク大統領はブルターニュ地方のレンヌ市を視察中だった。第一報を聞くや、その場で同行記者を前に「フランスは今、大きな動揺とともに、米国を襲った非道なテロについて知った。フランス国民は皆、米国民とともにある」と緊急声明を発表した。発生から一時間半、各国の中で最も早かった。その夜、エリゼ宮からテレビを通じ国民に演説し、「米国て起きたことは、我々にいつでも起こり得る」と、テロとの戦いでフランスが積極的な役割を果たすことに理解を求めた。

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執筆者プロフィール
西川恵(にしかわめぐみ) 毎日新聞客員編集委員。日本交通文化協会常任理事。1947年長崎県生れ。テヘラン、パリ、ローマの各支局長、外信部長、専門編集委員を経て、2014年から客員編集委員。2009年、フランス国家功労勲章シュヴァリエ受章。著書に『皇室はなぜ世界で尊敬されるのか』(新潮新書)、『エリゼ宮の食卓』(新潮社、サントリー学芸賞)、『ワインと外交』(新潮新書)、『饗宴外交 ワインと料理で世界はまわる』(世界文化社)、『知られざる皇室外交』(角川書店)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)、訳書に『超大国アメリカの文化力』(岩波書店、共訳)などがある。
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