水の未来をシミュレーション小説に描くなら――二〇五〇年八月、OPEC(石油輸出国機構)ならぬOWEC(水輸出国機構)は、水の価格トン当たり二十万ドルを四割引き上げる決定を下し、輸入国側を震え上がらせた。 この結果、飲料水を輸入に頼る中国、インド、英国、ドイツなどの国々の経済は重大な打撃を受けるものとみられ、元、ルピー、ユーロなどの通貨は軒並み売り攻勢を浴びせられている。 日本はOWECの有力メンバーだが、国内には水の輸出に反対する空気も強く、二十一世紀初頭、「脱ダム宣言」などで継子扱いされたダムが貯水用としてにわかに脚光を浴びはじめている――とまあ、こんな具合いになるのではないかと思われるほど、水不足は地球規模で広がりつつある。 地球上の水の量はおよそ十四億立方キロメートル。そのうち九七・五%が海水で、淡水は二・五%しかない。しかも、その大部分は南極・北極の氷である。地下水を含めて河川や湖、沼などにある淡水は〇・八%。これを六十億人の人類が、生のまま、あるいは滅菌して飲んでいる。水の量そのものは先史以来変化はないのだが、飲む人口が増える。のみならず一人当たり消費量も増える。水不足が加速するわけだ。

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