台湾の自動車大手、中華汽車工業がリコール問題でどん底にある三菱自動車の事業再生計画の一環として、優先株を百億円引き受けた。三菱グループ各社や企業再生ファンドが並ぶ引受先の中では異色の存在だが、技術支援を三十年以上仰ぎ続けた三菱自の窮地を救おうという単純な美談ではない。中華汽車の視線の先には成長する中国の自動車市場がある。 中華汽車は「台湾自動車産業の母」と呼ばれる呉舜文女史がオーナーの裕隆集団の中核企業。紡績、半導体、自動車を幅広く手掛ける企業グループで、傘下には日産自動車と提携する裕隆汽車製造も抱える。業績がV字回復した日産と三菱自では提携相手として雲泥の差だが、中華汽車が三菱自と組むメリットも小さくない。 中華汽車のシナリオはこうだ。福建省汽車工業集団と一九九五年に折半出資で設立した合弁会社、東南(福建)汽車工業に年内に三菱自の資本参加を仰ぐ。製品開発能力を持たない東南汽車の商品は現在、中華汽車経由で導入した三菱自のセダン「ランサー」型など四車種のみだが、今度は株主。三菱自に技術提供車種の要望も出しやすくなる。車種を順次充実させて、東南汽車に中国市場での生き残りの最低ラインと言われる年間三十万台(二〇〇三年実績は約八万三千五百台)をクリアさせる――。

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