英国を本拠に欧州各地にも進出している英老舗百貨店、マークス・アンド・スペンサー(M&S)が、「小売王」の異名を取る英国の富豪、フィリップ・グリーン氏の買収攻勢に遭っている。同社は買収から身を守ろうと、「再建の名手」のスチュアート・ローズ氏を新社長に迎え入れたが、頼みのローズ氏自身に買収話をめぐるインサイダー取引の疑いが持ち上がり、社内は大混乱に陥っている。 M&Sは百十歳を迎える老舗だ。高品質なプライベートブランド商品で固めた斬新さが一九八〇年代までは受けたが、GAPなど衣料量販店の進出で色あせた。また、安さではスーパーにかなわないし、高級感という点ではハロッズのような高級百貨店に見劣りする。この中途半端さが裏目に出始め、消費者の嗜好の変化についていけない経営の在り方も響き、近年は経営不振に陥っていた。 この間隙を縫って、五年前にM&S買収に触手を伸ばしかけたグリーン氏が今年五月、正式に買収を提案。同氏は成金趣味の私生活が嫌われ、企業経営に関しては徹底したコストカッターで知られる。慌てたM&S側はホームズ社長を更迭、衣料量販店アルカディアの再建に手腕を発揮したローズ氏を迎え入れ、企業防衛に乗り出した。グリーン氏は買収価格を次第に引き上げてはいるものの、主要株主の多くは「安く買い叩きすぎ」と反発しており、交渉は膠着している。

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