イラクの「宿敵」だったシリアに、イラク戦争後、多数のイラク国民が流入している。その数は約二十五万人に上る模様だ。 一九六六年にシリアのバース党がイラクのバース党と袂を分って以来、両国は対立。シリアはイラン・イラク戦争の際、アラブ諸国の中で唯一イラン側につき、湾岸戦争中にはアラブ合同軍に派兵してイラクと対峙した。フセイン元イラク大統領と故アサド・シリア大統領が犬猿の仲だったことは有名だ。 ところが、いまや事情は一変。シリアの主要都市にはビジネスマンや治安悪化を嫌って出国した一般人など、多くのイラク国民が住む。当初、地中海岸のリゾート地、ラタキアに多かったイラク人は、夏の到来と共に多少涼しい首都ダマスカスや山岳地帯へと移っている。ダマスカスの下町にはイラクナンバーの車が走り、アパートの家賃は値上がりした。港湾都市タルトゥスのホテルはイラク人ビジネスマンで超満員の状態となっている。 シリアからの義勇兵がイラク入りしているなど両国の政治的緊張は完全には解けていないが、国民レベルでは話は別のようだ。

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