民放を脅えさせるNHKの拡大戦略

執筆者:小田桐誠2004年9月号

噴出するスキャンダルもものかは、NHKは“肥大化”に余念がない。その目指す先は、本当に視聴者が求めている番組なのか――。 一〇八五時間――NHKのアテネ五輪の放送時間は、アトランタ五輪を上回る史上最長の規模となる。地上アナログ(総合)、地上デジタル、BS-1(衛星第一)、ハイビジョンの四波を使った大規模な中継体制は、地上デジタルで初めて「マルチ編成」(周波数の帯域を分割して二つのチャンネルを同時に放送すること)を取り入れるというオマケつきだ。 五輪中継は一例にすぎない。ここ数年、NHKは立て続けに新たな試みを打ち出し、業務を拡大させてきた。最近の動きを列挙するだけでも、それはわかる。●六月の組織改革に伴う人事異動で放送総局内にアニメーション室を新設。同時に総合企画室内に「国際展開プロジェクト」を設置、NHKアニメの海外展開を図る。●BS-1による二十四時間ニュース専門チャンネル構想を進める。●民放に先がけて、来年度から「蓄積型放送」を開始する。まだ使用していないBS放送などの空き電波を使って家庭端末(サーバー)に番組を少しずつ送り、自動的にためることで、いつでも視聴が可能になる。番組だけが送られるため、CMと番組をセットにしている民放は慎重にならざるをえない。

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