急接近する中印のソフトウェア業界

執筆者:ラムタヌ・マイトゥラ2004年9月号

 中国とインドの経済関係が、目覚ましい勢いで深化している。二〇〇〇年には二十億ドルにも満たなかった中国―インド間の貿易額は、今年にも百億ドルに到達すると見られる。中印両政府は今年三月、FTA(自由貿易協定)締結に向けた作業を公式に開始した。両国の輸出入銀行も二国間貿易を後押しする信用供与枠の設定を検討中だ。 インドの主力産業であるソフトウェア業界は目下、活況に沸いている。タタ・コンサルタンシー・サービシズ(TCS)は八月下旬にムンバイ(旧ボンベイ)証券取引所へ上場、十一億七千万ドルを調達する予定だ。インフォシス・テクノロジーズは昨年、インドの上場IT(情報技術)企業として初めて年商十億ドルを突破した。好調の背景には、アメリカのIT投資回復に伴う輸出増がある。 だが、アメリカ頼みは両刃の剣。「ジョブ・オフショアリング(業務の海外委託)」に対する反発を目の当たりにして、インドIT業界はビジネス相手の分散化が必要だと痛感している。その有力候補地がアジア、なかでも中国に他ならない。 中国にとっては、インドが持つ欧米向けビジネスのノウハウが魅力的。広東省深セン市からの使節団がコルカタ(旧カルカッタ)を訪れウェストベンガル州との協力関係構築を協議するなど、これまでになかった動きも目立つ。深センで立ち上げられる中国初のオフショア・ソフト開発センターには、インドのシステムインテグレーション大手ゼンサーが参画した。人材育成に関しても、現在、二万五千人に上る技術者が同分野のインド企業NIITのトレーニングを受けている。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。