北朝鮮「共同社説」の読み方

執筆者:平井久志2011年1月7日
第105戦車師団の施設を視察する金正日総書記。写真は朝鮮中央通信が1月4日に配信したが、実際の視察の正確な日時は不明 (C)EPA=時事
第105戦車師団の施設を視察する金正日総書記。写真は朝鮮中央通信が1月4日に配信したが、実際の視察の正確な日時は不明 (C)EPA=時事

 北朝鮮の労働党機関紙「労働新聞」など3紙の新年の共同社説が発表になった。共同社説は前年を総括し、その年の路線を提示する重要文献である。金日成(キム・イルソン)時代は金日成の「新年の辞」が発表されたが、金日成の死後は、共同社説が事実上、金正日(キム・ジョンイル)の「新年の辞」の役割を果たしている。  今回の共同社説は「今年、いま1度、軽工業に拍車をかけ、人民生活の向上と強盛大国の建設に画期的な転換をもたらそう」と題されたもので、北朝鮮が「強盛大国の大門を開く」としている2012年を前に、軽工業に重点を置いて、人民生活の向上を訴えたものだ。

最大の課題は経済建設

 日本の各メディアは、分かりやすい「南北間の対決状態を1日も早く解消しなければならない」「対話と協調事業を積極的に推進すべきである」という韓国との南北関係改善に向けたフレーズに飛びついたが、今年の共同社説のメインテーマは「軽工業」「人民生活の向上」「強盛大国」の3つのキーワードに代表される経済建設とその裏側に隠された後継体制づくりの困難さである。
 共同社説に登場する「先軍」というキーワードの登場回数は2005年の44回をピークに09年は32回に減少し、昨年は14回に激減し、今年も14回に留まった。その代わり、今年は軽工業は21回、強盛大国は20回、人民生活は19回も登場した。
 昨年の共同社説は「党創建65周年を迎える今年、再び軽工業と農業に拍車をかけ、人民生活で決定的転換を成し遂げよう」と題されたものだった。今年の共同社説も国内の経済建設では昨年と同様の基調であり、これは逆に言えば、昨年に人民生活の向上について「決定的な転換」が成し遂げられなかったことを示すものだ。
「思想分野の総攻勢」「思想的一色化」といった表現がなくなるなどイデオロギー分野での攻撃的な表現にやや陰りが見え、経済建設を訴える守勢的な基調が目立った。

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