国が消える

執筆者:徳岡孝夫2011年1月14日

 今年の正月、家電量販店で福袋を買ったら電気自動車(EV)が入っていたというのが最大の話題だった。だが早合点は禁物。そういうのはあくまで1つの話題作りに過ぎず、EVが今年中にも飛躍的に売れ出したり、需要の主役になったりする前兆ではない。  景品作戦は、むしろ売る側の必死の売り込み、同業者間の倒すか倒されるかの熾烈な関係を語っているに過ぎない。 「ハイオクを満タン」と命じれば、たちまち入る。「有難うございましたァ」の声を尻目に、さあ地の果てまでも行くぞと自信満々にガソリンスタンドを出ていくあの愉快。EVは、ああいうエゴの満足をドライバーに与えない。なのにEVの値段は、今のところハンパじゃなしに高いのである。  国内需要を引っ張る目玉商品がない。洗濯機からデジカメまで、日本人はすでに高性能なのを持っている。今年はエコ減税も地デジの買い替えも減る。大々的に広告して「これを買えばあなたは幸福になれる」と売り込めるような新商品がない。沼のようなデフレ。  政界には、相変わらずネコの首に消費税の鈴を付ける勇気ある政治家がいない。新年度の予算を賄う歳入の半分近くは国民からの借金(国債)である。総人口が減り始めている国の誰が、それを引き受けてくれるのか。

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