先住民・社会勢力を中心に高い支持をうけて「多民族国家」建設に向け改革を推進するボリビアのモラレス政権が思わぬ苦境に立たされている。先住民出身のモラレス大統領は、新憲法に基づき2009年末の大統領選挙で64%の高得票率で再選され、議会でも三分の二の絶対多数を得た盤石の体制で、1年前政権二期目を発足させた。白人系の東部など野党反対派勢力を法的に追及し、敵なしの覇権を確実にした矢先であった。

 躓きの一つは、昨年12月26日に発表したガソリン価格の値上げである。ガソリンに対する補助金を撤廃し、ペルーなど周辺国への石油製品の横流しを防ごうとする改革だったが、1980年代半ば2万%を越すインフレに喘いだ庶民のトラウマを呼び起こした。公共料金の値上げを「裏切り」と怒った反政府抗議行動(ガソリナソ)を誘い、「人民の意向に従って統治する」という社会運動に支えられた政権の原点に則って値上げを撤回するというお粗末な結果であった。

 本来、車を所有する中産階級以上を利する補助金は撤廃し、低所得層にターゲットを定めた社会対策として補助金を使うべきであったが、ポピュリスト的なバラ蒔き政策から抜け出せないでいた。投資環境の悪化で外資が入らず、昨年赤字に転じた財政状況を背景に、補完措置をとった上での改革だったが、「政策決定への民衆の政治参加」を謳う政府によって一方的に発表された政策は、支持者に拒絶される形となった。1月10日に公表された世論調査では、従来50%を確保してきた大統領支持率は30%まで急落している。

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