南米諸国のパレスチナ国家承認と中東危機

執筆者:遅野井茂雄2011年2月21日

 イスラムの文化社会的影響力は、征服したスペインを通じて中南米にもたらされたが、スペイン・ポルトガルの征服から500年、独立後200年を経て、中南米諸国はようやく独自の中東イスラム外交を展開し始めた感がある。だが中東での政変の広がりは、ブラジルを中心とする南米諸国の中東外交の推進に思わぬ障害となっている。

 昨年12月3日のブラジルに続き、アルゼンチンなど南米諸国が次々とパレスチナを独立国家として承認する決定をし、今年1月には保守政権のチリと親米的なペルーが続き、コロンビアを除く全南米諸国が国家承認をするに至った。南米では反米・反イスラエルのベネズエラ・チャベス政権が、2009年イスラエル軍のガザ地区への軍事作戦を機にイスラエルとの断交に踏み切り、パレスナ国家を承認するとともに、中東諸国の関係強化を図っている。

  南米におけるドミノ的なパレスチナ国家承認の動きは、アメリカ政府の影響力の低下とともに、地域全体の中東政策の転換を物語るものである。2009年のアッバス議長の歴訪を含むパレスチナ自治政府の働きかけに対し、退任を控えたブラジルのルーラ大統領のイニシアティブで南米国家連合(UNASUR)が歩調を合わせたものと言えよう。

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