神戸の孫文記念館で

執筆者:野嶋剛2011年2月22日

先週、神戸の孫文記念館に行ってきました。世界各地にある孫文記念館を回るのが好きで、いままで、マカオ、香港、シンガポール、広州、サンフランシスコなどの孫文記念館に行ったことがありました。今年は辛亥革命100年ということで、興味があったので、日本にあるのにいままでご縁がなかった神戸の孫文記念館に出張の合間にちょっと立ち寄ってみました。

いちばん印象に残ったのは、やはり孫文と日本の密接さです。各地の孫文記念館は当然、それぞれの土地と孫文との縁にスポットを当て、地域性をにじませた展示をしています。神戸の孫文記念館も例外ではなく、「孫文と日本」が展示の中心でした。

展示によれば、孫文は革命運動に奔走した30年間のうち、9年間を日本で過ごし、神戸だけで計18回訪れました。神戸の華僑界や関西の経済界、学界の人々と交友を重ねました。

孫文にとって、日本は革命のための避難地であり、資金源であり、大勢の支援者のいる土地でした。日本の知己としては、大量の資金援助を行った梅屋庄吉、孫文の臨終に立ち会った萓野長知、日中経済連携を語り合った渋沢栄一、政界の後ろ盾となった犬養毅、思想的な影響を与えた頭山満のほか、ロンドンで親友の交わりを持った南方熊楠など、明治期の日本を彩る人物像が展示から浮かび上がりました。

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