リビア問題をめぐる南米諸国の立場の違いが鮮明になりつつある。

 2月26日国連安保理によって対リビア制裁決議が全会一致で採択されたが、議長国として決議の採択を取りまとめた非常任理事国ブラジルの動きに注目が集まっている。

 2009年イランの核開発疑惑に対するアメリカ等の制裁の動きに反対し、トルコとともに制裁を回避するための仲介役を演じて、アメリカの反発を買うなどブラジルの独自外交を印象づけたが、今回はアメリカ等と一致して制裁に回ったからである。同決議には人道上の観点から中国やロシアも賛成したという特殊事情があったことは疑いないが、南・南協力や対米自立を意識したルーラ前政権の独自外交から、ジルマ・ルセフ政権になってより対米協調を意識した外交政策への転換とも受け取られている。

 ブラジルは昨年7.5%のGDP成長を達成し、イギリス、フランスを抜いて世界第5位の経済大国に躍り出たことが確実になった(3月3日付フィナンシャル・タイムズ紙電子版)。その大国としての責任を世界に示し、将来の常任理事国入りに向けた現実主義外交の一環とも理解できる。ルーラ時代には米国を意識し多極化の推進に傾注するあまり、キューバ、ベネズエラ、イランでの人権問題に目をつむり反米諸国との協調関係につとめ、それが批判されてきただけに、この変化は注目されよう。

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