温家宝の記者会見での哀悼の意

執筆者:野嶋剛2011年3月15日

今日、北京では全人代、全国人民代表大会の閉会式がありました。温家宝首相は通例の内外記者会見を行って、私はテレビ中継で見ていました。日本の地震に、どのように言及するか、興味があったからです。

会見が始まって、中国の記者だけでなく、韓国やフランス、香港、台湾の記者が次々と質問に立ちます。日本人記者は手を挙げているのですが、なかなか指されません。そのまま最後の質問となり、会見が終わろうとするところで、温家宝首相から「日本の記者はいるかな、一つ言いたいことがある」と自ら言い出しました。

そのあと、「今回の災害で亡くなった日本の国民に対して、深い哀悼の意を表します。被災地への支援も、必要があれば、さらに援助を行う用意がある」と語りました。

なぜ、途中で日本人記者に質問させなかったのでしょうか。昨年の全人代でも、日本人記者は質問が当てられず、話題になっていました。日本の報道では、この最後に切り出した下りはあまり紹介されていないようですが、とても興味深かったです。

私が思うに、日本人記者は地震のことだけではなく、ガス田などあまり触れてほしくない問題を聞いてくることを恐れた可能性があります。地震については、哀悼の意は表したい。でも、日本人には質問させたくない。そこで、途中での挙手は一切知らない顔をして、最後に言いたいことだけ言った、ということではなかったかと私は見ています。(野嶋剛)

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