危機管理事態に直面して

執筆者:2011年4月1日
 冷戦の終焉、すなわち東西対立構造が崩壊してから、安全保障の概念が目に見えて多様化している。国の主権・国家の利益・国民の生命財産の保護という基本的要素は、これまで伝統的戦争という文脈で捉えられてきたが、もはや人が主役である戦争の分野に留まることなく、総合的な安全保障の世界観を必要としている。私たちは、それを新たな時代精神として受け止めなければならないだろう。  安全保障環境の変化に気づき、それへの対応が求められる今、日本は未曾有の大災害に見舞われた。地震・津波による死者・行方不明者の数が2万8千を超えた。津波の巨大なパワーは、平和な生活を保障していた社会構造の何もかもを押し流してしまった。加えて、原子力発電所の安全維持機能が崩壊したことによって、国民生活の破綻が危惧され、さらには放射能障害の恐怖がもたらされている。  大震災は、東北関東だけの地域的現象ではなく、日本列島全域に危機感を伝搬させている。国内に限らず、国際社会の大国として認められている日本の深刻な事態は、多数の国々にインパクトを与える。然るに、日本の危機対応の成否、そして正常な安全保障態勢へ復帰する時期に関しては、世界が注目し、また国際システムが力を貸すところとなる。

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