危機管理には、予防、対処、収束という段階がある。自然災害は「予防」できないため、対処に重点が置かれる。一方、戦争では、むしろ「予防(抑止と外交)」が重要である。

 また、災害の場合、「収束」は、「復興」という明確な目標があるのに対し、戦争の場合、何をもって「収束」とするかの目標づけが難しい。

 だが、広義の危機管理として見た場合、政治指導、組織間の意思疎通、国民のパニック防止など、災害と戦争には共通する課題が多い。

 今回の大震災では、「想定外」の巨大津波が被害をもたらした。人的被害は数万人を数えるが、同時に、多くの住民が避難に成功しており、最悪の事態を想定した住民意識の高さが裏付けられた。

 他方、福島第1原発の事故については、政府および東電は、「予防」でも「対処」でも、最悪の事態を想定していなかった。地震とともに原子炉は停止したが、炉心冷却系の機能停止を想定していなかった。

 事後の対処も、事態の悪化に伴う後手の対応に終始し、現場で復旧に当たる要員のリスクを増大させた。政府の情報開示も、リスク評価に対する責任の所在が不明確で、徒に風評被害というパニックを煽っている。

 「専門家」に「想定外」というエクスキューズは許されない。その背景に、東電の組織上の問題や、認可した経産省との「もたれ合い」の構図が疑われる。

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