6月5日に迫ったペルー大統領選決選投票は、各種世論調査によれば、4月10日の一回目の投票で8%の差をつけられていたケイコ・フジモリ候補が逆転し、ウマラ候補に数パーセントのリードを保つ優勢の中で最終盤を迎えた(Ipsos Apoyo:ケイコ43%、ウマラ39% Datum:ケイコ46.9%、ウマラ41.8%)。だが、「最悪の候補者同士」の中からの選択を迫られ「恐れが決定的要因」という選挙戦の中で態度未定が10%前後に上るとみられており(投票は義務)、投票直前まで何が飛び出すか分からず、予断を許さない状況が続いている。

 その中で、昨年ノーベル文学賞を受賞したバルガス=リョサは、決選投票に臨みいち早く、「独裁への回帰にノー」を唱えてウマラ支持を表明(4月24日付スペイン有力紙エルパイスへの寄稿)、決選投票はバルガス=リョサとフジモリとの間で戦われた1990年選挙の再現を思わせる展開となった。「歴史は繰り返す」である。

 1990年選挙で最有力候補であったバルガス=リョサは、一回目の投票で3%の得票差でにわか仕立ての日系候補に追い込まれると、決選投票ではやすやすと逆転され、大統領の座を目前にして無念の敗北を喫した。正統スペイン系候補が、出自も分からぬ日系二世によもやの敗北を喫した、その屈辱感たるや幾ばくのものであったろうか。だが、その日系大統領は、強権をもって臨み、「民主主義を破壊」、「腐敗まみれの独裁者」として10年後に失脚、2010年に25年の刑期が確定した。政治生命は絶たれたはずであった。一方、自身は同年ペルー人初のノーベル賞受賞に輝き、20年後の明暗は分かれた(本欄2010年10月19日付「バルガス=リョサとフジモリ――20年後の明暗」)。

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