前回の寄稿(5月31日付当欄参照)では、ティム・ポーレンティー前ミネソタ州とミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事の共和党大統領候補指名獲得争いへの正式出馬表明と「序盤州」における二人の選挙キャンペーン戦略についてアイオワ州とニューハンプシャー州にそれぞれ焦点を当てながら取り上げた。今回はポーレンティー、ロムニー同様に州知事経験のあるジョン・ハンツマン前ユタ州知事の選挙キャンペーン戦略についてフロリダ州の重要性を考えながら検討したい。

 ハンツマンは今年4月30日付で駐中国米国大使を辞任し、帰国後は共和党大統領候補指名獲得争いへの出馬に向けた準備に追われている。先月19日からは5日間の日程で全米で最初に予備選挙を実施するニューハンプシャー州入りし、同州の有権者との対話集会に臨んだり、同州の共和党幹部らと協議したりするなど出馬に向け精力的に活動した。ハンツマンは未だ正式出馬表明をしていないが、先月18日には自らの選対本部をフロリダ州オーランドに設置することを決定した事実をハンツマン選対本部の幹部らがメディア関係者に対し明らかにしている。

 ハンツマンがオーランドに選対本部を設置するのは、自らをワシントンから距離を置く政治家として位置付けて共和党大統領候補指名獲得に挑む戦略の一環としてだけではないのであろう。近年、フロリダ州共和党予備選挙は共和党大統領候補選出プロセスの中でもその役割を益々高めてきている。前回の2008年の共和党大統領候補選出プロセスで、フロントランナー的存在であったルドルフ・ジュリアーニ前ニューヨーク市長が、アイオワ州党員集会、ニューハンプシャー州予備選挙、サウスカロライナ州予備選挙での選挙キャンペーンを事実上無視し、殆どの政治資本をフロリダ州予備選挙に投入したことは記憶に新しい。結果はジュリアーニの惨敗となり大統領候補指名獲得争いからの撤退を余儀なくされた一方で、同州予備選挙で勝利したジョン・マケイン上院議員(アリゾナ州選出)が事実上の共和党大統領候補の立場を固めたのである。

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