「大連立」「次期首相」をめぐる百家争鳴

執筆者:野々山英一2011年6月10日
「次期首相候補」に名が挙がる野田佳彦財務相 (C)時事
「次期首相候補」に名が挙がる野田佳彦財務相 (C)時事

 民主、自民両党の大連立構想が、成就する可能性はあるのか。  大連立というと2007年11月、当時の福田康夫首相(自民党総裁)と民主党の小沢一郎代表の間で成就寸前まで行ったが、反発の声が上がり不発に終わった。今回は、4年前には反対に回った岡田克也幹事長らが大連立に前のめりで、小沢氏が阻止に動いているのは皮肉だが、長らく「マスコミで騒がれても、実現する可能性はゼロに近い」と言われてきた大連立が、なぜ急浮上したのか。  鳩山政権誕生以来、民主党は国民の期待を裏切り続けている。そのことは民主党幹部らも十分自覚していて、自信喪失に陥っている。今年に入ってから民主党幹部たちは「強い政権をつくる必要がある」(玄葉光一郎政調会長)などの表現で自民党との連携を模索してきた。その動きが「ポスト菅」をめぐり一気に表面化したのだ。

「小沢外し」と「世代交代」

 世論も、追い風になっている。朝日新聞の世論調査では大連立を容認する意見が5割を超えた。政治空白をつくらず強力な政治を推進してほしいという思いが容認論につながっている。
 では、大連立は成就するのか。そして首相は誰になるか。
 仙谷由人官房副長官は6月4日、自民党の大島理森副総裁と会談したのを手始めに、驚異的なペースで与野党の幹部と会談を重ねている。仙谷氏の狙いは、ずばり「小沢外し」。大連立は共通の敵を排除するために行なわれることが多い。その典型例が1994年の自民、社会、さきがけの連立政権だ。自民党と社会党は長い間与野党の第1党としてイデオロギー闘争を続けてきたが、当時、独断専行と批判された小沢氏への敵対心が連立を成就させた。
 仙谷氏は、今回も小沢氏を共通の敵とした大連立を仕掛ける。この場合、小沢氏らは、民主党とは袂を分かつことになる。政権の安定、仇敵との決別を同時に実現しようとしているのだ。仙谷氏の意中の人物は野田佳彦財務相。手練手管に走らず筋を通す性格は、自民党内でも一定の信頼を集めている。「小沢氏とも悪くない関係」という報道もあるが、野田氏は2008年の党代表選に名乗りを上げようとした際、当時代表だった小沢氏の側近たちから、陰に陽に妨害工作を受け、結局出馬断念に追い込まれた時の恨みは忘れていない。仙谷氏は野田氏に「小沢切りもできる人物」と期待を寄せている。岡田氏、枝野幸男官房長官ら「反小沢勢力」が野田氏にラブコールを送っているのもそうした事情があるからだ。
 玄葉氏は多少発想が違う。反小沢をイメージするのは同じだが、世代交代も同時に進めようとしている。今回の「菅降ろし」政局では菅、小沢氏や鳩山由紀夫前首相の「老害」が目に余ったと玄葉氏は考えている。
 自民党内でも森喜朗元首相、古賀誠元幹事長ら長老が小沢氏と結託して内閣不信任案の早期提出を主導、政治を混乱させたことへの批判が強い。その代表格は石破茂政調会長。盟友関係にある玄葉、石破の両氏は、大連立をきっかけに40代、50代を中心とする新党結成、政界再編をしかけようとしている。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。